日までここに残っていたら、帆村荘六もそこへ出かけて、きっと、くわしく調べたことだろうと思う。ところが、それから間もなく――時間にして三四分後に、透明壁は急になくなってしまった。そして喜作たちも、また反対の側にいた田中さんや山岸中尉たちも、あたり前に歩きだすことができたのであった。そしてこの事件は、ふしぎな話として、この白根村にひろがっていった。それはやがて鉱山事務所へも伝わったのである。
「昨日《きのう》白根村でなあ、まっ昼間、十二三人の衆が揃いも揃って狐に化かされてなあ、その中には海軍さんまでも居なすったそうじゃが、こんこんさんもたちのわるいわるさをなさるものじゃ。この頃、ちっとも油揚《あぶらあげ》をあげなんだからじゃろ……」
という具合に、この奇怪な噂は、附近の村々へひろがっていったのである。
翌朝、鉱山事務所の中にある建物の中で、目をさました例の特別刑事調査隊の七人組にも、この奇怪な話が伝わった。
「どういうわけですかなあ」
と、鉱山の人々からたずねられたが、七人組の博士たちは、ただ苦笑するだけで、何の返事もしなかった。
この話は、帆村荘六の耳にもはいった。彼がそれを聞い
前へ
次へ
全162ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング