……。われわれの診断によると、これはもう死んでいるのだ。心臓の音を顕微音聴診器できいても、全く無音だ。死んでしまっているものを、どこへ持っていこうと心配はないじゃないか」
この七人組の博士たちは、なかなか偉い人たちの集りで、少しも欠点がなかったが、しいて欠点をあげると、少しばかり頑固《がんこ》なところがあった。他人の言うことを、あまり取上げないのであった。それは刑事事件に対する自分たちの永い経験と、強い自信からきているようであった。次長はもう黙っているほかなかった。
怪物の死骸は、滑車《かっしゃ》にとおした長い綱によって、簡単に地上へ運ばれた。そこにはすでに、解剖に便利なように、天幕《テント》が張られてあった。
怪物の死骸は、白い解剖台の上に載《の》せられた。そのころ地底へ持っていってあった甲斐博士の解剖用道具が、つぎつぎに竪坑の下からあがって来た。
甲斐博士はすっかり白装束《しろしょうぞく》の支度をしていた。背中には、いつでも役に立つようにと、防毒面がくくりつけてあった。用意はすっかり整ったのだ。
甲斐博士が、電気メスを右手に握って、怪物の死骸に近づいた。その時だった。死骸
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