怪物は土中から出てきたのではないことがあきらかとなった。
 現場の写真が何十枚となくうつされた。竪坑の寸法が測られた。径が六メートルあった。
 竪坑のあらゆる壁が調べられた。そして三箇所において、この怪物がぶつかったと思われる痕《あと》が発見された。怪物が竪坑を下へと落ちてきたことは、いよいよあきらかとなった。
 怪物の死骸は、現場で立体写真におさめられ、実物と寸分ちがわない模型を作りあげる仕事が進められた。それからこの怪物のからだに附着《ふちゃく》していた土が小さく区分されて、いちいち別の容器におさめられた。
 坑道内の土も、全部集められた。
 七人の博士について来た助手たちは、ほとんど一睡もとらないで、この仕事を続けた。この怪物の頭部の後に、第三の眼らしきものがついているのが発見されたのも、この時であった。身体の要所要所の寸法も、くわしく測って記録された。
 あらゆる記録が、これで揃った。隊長の室戸博士は、この報告を受取って、たいへん満足した。
「それでは、あとを甲斐博士にお願いするかな」
 と、隊長は、甲斐博士の方に目くばせをした。
「はい。ようやくお許しが出ましたよ。それでは私
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