よく見てごらんなさい」
 帆村のいうとおりだった。皆は今さら帆村の推理の力の鋭いのに驚いて、彼を見直した。帆村は、べつに得意のようではなかった。彼はそこで吐息《といき》をつくと、
「とにかくこれは世界始ってこのかた、一番むずかしい事件ですぞ。そして非常に恐しい事件の前触《まえぶれ》のような気がします。悪くいけば、地球人類の上に、いまだ考えたことのないほどの、禍《わざわい》が落ちてくるかもしれない。皆急いで力を合わせ、一生懸命にやらねば、取返しのつかないことになるように思う。皆さんも重大なる覚悟をしていてくださいよ」
 といって、帆村はすたすたそこを立ち去ろうとするのであった。次長が驚いて、帆村をよびとめた。しかし帆村はいった。
「東京からえらい係官がみえて、その怪物を調べるようになったら、私を呼んでください。しかし今いっておきますが、どんなことがあっても、この怪物をここから出してはいけません。地上へ運んではなりませんよ」
 謎の言葉を残して、帆村は出ていった。

   七人組の博士

 東京からは係官が来るかわりに有名な特別刑事調査隊の七人組がやってきた。
 この七人組は、刑事事件に長
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