彼は太い音楽的な声で、そういった。
 あつまっている人々は、声のするほうをふりむいた。
「おお、帆村さんだ。帆村さん、いつのまにここへ来られたのですか」
 と、一同はおどろいて、帆村の顔をうちながめた。
 さてこの帆村理学士は、奇妙な死骸の謎について、いったいどんな科学的解決をあたえたのであろうか。かれはもういつのまにやら、しらべを始めていたのだ。

   奇抜《きばつ》な推理

「いやあ、どうも少し早すぎましたが、あんまりふしぎな話を聞いたものですからね……」
 と理学士帆村荘六は、ちょっときまりが悪いか、あとの言葉を笑いにまぎらせた。
「一向《いっこう》かまいませんよ。誰でもいいから、こんな気味のわるい事件は早く解決してもらいたいと思いますよ。帆村君は、どういう風に考えているのですか」
 そういったのは、この鉱山事務所の次長で、若月《わかつき》さんという技師だった。この人は、年齢は若いが、技術にも明かるく、そして、ものわかりもよく、鉱員たちの信望をあつめている人で、この鉱山にはなくてはならない人物だった。
「僕の考えですか……」
 帆村と若月次長のまわりに、皆が集ってきた。こ
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