から安心するように。それから奇妙な死骸のある現場はなるべくそのままにして、手をふれないようにせよと、東京がわから注意があった。
 このような手配がすんで、鉱山の人々も、土地の警察も、ほっとひと安心した。
 そこで人々の気持も、前よりはいくぶんゆっくりして来た。そのとき、ある人がきゅうに大きな声を出したので、まわりにいた人たちは、また何ごとが起ったかとおどろいた。
「そうだ。本社の研究所へ来ている理学士の帆村荘六《ほむらそうろく》氏にこれを見せるのがいい。あの人なら僕たちよりずっと物知りだから、きっと、もっとはっきりしたことが、わかるかもしれない」
「ああ、そうか。帆村理学士という名探偵が、うちの会社へ来ていたね。あの人は前に科学探偵をやっていたというから、これはいいかもしれない。もっと早く気がつけば、こんなにあわてるのではなかったのに……」
 といっているとき、人々の中へぬっとはいって来た長身の人物があった。眼鏡《めがね》をかけ、顔色のあさぐろい、そして大きい唇をもった人物であった。
「ああ、みなさん。あの奇妙な死骸が、どうしてこんな深い地底にあるかということが、はっきりわかりましたよ
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