れからどんな話を二人が始めるのか、それを聞き落すまいというのだった。
「まだたいした発見をしているわけではありませんがね、この怪物がどうしてこんな地底にころがっているかということだけは、わかったように思うのです」
そういって帆村は、次長の顔を見た。
「ほう、それはぜひ聞かせて下さい。私にはまったく見当がつかない」
次長は帆村の返事が待遠しくてたまらないという風に見えた。すると帆村は右手をあげて、頭の上を指さした。
「空から落ちて来たのです」
「えっ、空から……」
まわりに集っていた人々は、すぐには帆村の言葉を信じかねた。七百メートルの地底にころがっている死骸が、空から落ちてきたと考えるのは、あまりに奇抜すぎる。
「そうです。空から落ちてきたのです。さっき見ましたが、竪坑《たてこう》の天井が落ちていますね。この怪物は、竪坑の中をまっさかさまに落ちてきて、まずこの第八十八鉱区の地底にぶつかり、その勢《いきおい》で斜面を滑《すべ》ってこの掘りかけの坑道の奥にぶつかって、ようやく停《とま》ったのです」
「そういうことがあるでしょうか」と、次長はにわかに信じられない顔つきであった。
「では
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