声をかけても、相手にとどかなかった。密閉した壁が、それをさまたげているのだ。
 帆村は、かねてそれに気がついていたので、山岸少年をつれてきたのだった。少年は、帆村のいうことを、手旗信号でもって兵曹長に通じた。もちろん旗は持っていないから、手先を動かして信号したのである。
 兵曹長の目はかがやいた。兵曹長はさかんにうなずきながら、やはり手を動かして、返事を信号にしてよこした。
 こうして双方の連絡はついた。
 兵曹長は、この牢の外側に、錠《じょう》がおりているらしいと言った。もちろんそれは透明だから見えなかった。しかし兵曹長がその位置を教えたので、帆村は手さぐりで、そのありかを探しあてた。幸いにも、それは外側からつっかい棒のようなものをしてあるだけのことであったから、帆村はすぐはずすことができた。大成功である。神の御加護にちがいない。
 が、兵曹長を今ここからだすことは、ミミ族に見つかって、脱出のさまたげになるから、もうしばらく中にいてもらうことにした。そして帆村は、脱出の用意ができたら、かならず迎えにくるからと、兵曹長に言って、山岸少年とともにそこを離れた。
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