産です」
「それはリーマン博士がさきにいわれたX宇宙族を探《さが》し当て、これを生きたままで地球へ連れ込むことに成功することです。これがうまくいけば、いかなる反対者といえども、最早黙ってしまうでしょう。X宇宙族を目前に見た国民はきっと沸きあがるでしょうから、反対者はもう下手な発言が出来なくなるのです」
「今ワグナーさんから伺《うかが》ったところによれば、本艇の成功と失敗との岐路は、X宇宙族を捕えるかどうかに懸《かか》っているのね。それはまるで大洋の底に沈んだ指環を探し出すくらいの困難な仕事ですわねえ。そうお思いにならない。ワグナーさん」
「僕にはそれを判断する力はありません。一体どうなるか、博士のうしろについていくだけです」
ワグナーは、あっさりと兜《かぶと》をぬいだ。
「ワグナーさんは、ああ仰有《おっしゃ》いますが、他のみなさんがたは、どんな風にお見込《みこ》みをなすっていらっしゃるの」
ミミは座長のような顔をして、一座を見わたした。だが、誰も直ぐに応える者がなかった。みんなワグナーと同じ考えなんだろう。
ただ、暫くしてフランケがいった。
「それはともかく、月世界へ着けば、もう
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