もの、一機はソビエト、もう一機は残念ながら所属不明、もう五機はわがドイツ機なることが判明した」
「けしからん奴どもだ。なぜ、本艇はそいつらを撃墜してしまわなかったのです。今後の本艇の使命遂行上、彼らはきっと邪魔をするに決っていますよ」
「それは考慮した。しかしわれらの統領は成層圏を離れるまでは、如何なる場合といえども、攻撃に出でざるよう命ぜられた。わしは、その命令に忠実であった」
 このとき僕は、大きな声で叫んだ。
「艇長。われらの統領と仰有《おっしゃ》ったんですが、それは誰です。本艇とどんな関係があるのですか。どうも僕だけが、本艇についてもこんどの冒険旅行についても、予備知識が一等貧弱なのです。どんどん教えてください。そうでないと折角のお役目が勤まらないから……」
 艇長は、にっこり笑って肯《うなず》いた。
「われらの統領の名前はいえない。仮りにZ提督《ていとく》ということにして置こう。この統領Z提督が、こんどの超冒険旅行の計画者であるわけだ。わしたちは、絶えず統領から助言をうけ、命令を受取っている」
「すると、その統領なる人物は、ドイツ本国にいるのですね」
「いいえ、ドイツの占領地
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