り正六面体をなしていたし、広さは十坪ばかりのかなり広いところで、中二階のようになった階上がついていて、壁際《かべぎわ》の斜めに掛った細い梯子《はしご》によって、昇降ができるようになっていた。恐らく上には、ベッドその他があるのではなかろうか。僕らのはいっていったところは、大きな会社の重役室と大して変った点はなかった。
「やあ、だいぶん諸君を怒らせたことだろう。わしは先刻承知しているんだが、出発早々でどうにもしようがなかったのだ。それに、今だからいうが、本艇の出航が危《あやう》く敵国スパイに嗅ぎつけられようとしたのさ。成層圏の手前から、高度二十キロメートルのところまで、本艇を覗《うかが》っていた飛行機が十二機もあったので知れる」
 と、リーマン博士は、細長の顔によく似合う単眼鏡をきらつかせ、ときには綺麗に刈込んだ頤髯《あこひげ》を軽く引っ張ったりして、機嫌は決して悪い方ではなかった。
「一体何者ですか、十二機は」
 ワグナーが、憎々《にくにく》しげに、語尾に力をこめて艇長にきいた。
「本国へ調査を依頼したところ、返電が来て、そのうち三機はユダヤ秘密帝国に属するもの、それから二機はアメリカの
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