て送った。
 その間に、僕は戸口のところへいって、把手《ハンドル》を廻して押してみた。扉は錠が下りているらしく、押せども蹴れども、開きはしなかった。
 もう無体に癪《しゃく》にさわってきて、そこらにある什器《じゅうき》家具を手あたり次第にぶち壊してやろうかと思い、まず卓子《テーブル》に手をかけたのであるが、やっぱり駄目だった。卓子は、すこぶる簡単なもので、一枚板に足がついているだけのものだったが、ぶつかってみると仲々|頑丈《がんじょう》で、こっちの腕が痛くなった。超ジュラルミンか何かで出来ているらしい。
 抵抗すればするほど、こっちが損をすることが分ったので、僕はもう諦《あきら》めて、どうでもなれと長椅子の上にふんぞりかえって寝ていた。そのうちに亢奮《こうふん》の疲れが出てきたのか、睡《ねむ》くなった。そのままとろとろと眠る。
 なにか物音がしたので、目がさめた。
 はっとして、目を明けて部屋を見廻すと、白い上衣を着たドイツ人の給仕が、卓子の上に食事の盆を置くところだった。
「やあ、ご苦労。もう食事の時間かね」
 僕は、坊主《ぼうず》憎《にく》ければ袈裟《けさ》までもの譬《たとえ》のと
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