旅行の途《と》についたわけです。それからこっちは、艇長たる私が、貴方の身体も生命も共に預ったのです。極秘の旅行ですから、ちょっと睡《ねむ》って貰ったのです。もう大丈夫ですから安心してください。貴方は無事本艇の中に収容を終りました。しばらくそこで休息していてください。そのうちに、貴方の気が落付くように、誰かをそこへ迎えに行って貰います」
博士は淀《よど》みなく陳《の》べたてた。
箱型自動車の中で、僕は自らスイッチをひねって、麻睡瓦斯《ますいガス》を放ったことが朧気《おぼろげ》ながら確認された。博士のいう極秘の旅行だからやむを得ないことだったろうが、なんだか小馬鹿にされたようで、いい気持ではなかった。そして僕はまんまと「本艇」の中に収容されてしまったのである。
「本艇といいましたね。すると僕の今居るところは、船室なんですか」
僕はそれを訊《たず》ねざるを得なかった。
「船室? そうですねえ、船室といってもいいでしょうね」
博士の声は、この部屋のどこかに取付けてある拡声器《かくせいき》から流れ出てくるようだ。目の前にある戸棚のどこかに仕掛があるらしい。
「すると目的地はどこですか。も
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