ハンカチで額の汗をふきながら、
「あれをなんというか、とにかくあの怪物が実験室の中の、なんにもない空間に足の方からむくむくと姿をあらわしはじめたときには、わしの総身の毛が一本一本逆だち、背中に大きな氷の板を背負ったように、ぶるぶると顫えがきて停めようがなかったものさ」
「え、なんですって」
 と僕は思わず博士の言葉を聞きかえした。なんという怪奇、僕にはちょっと了解に苦しむことだ。
「おうほ、理解ができないのも無理ではない。つまり、もっと前から話をしなければ分らないだろう。なぜそういう怪物を、この実験室内に生ぜしめるようになったかということを。――」
 そういって博士は、戸棚の上から、一束の青写真をおろし、テーブルの上にひろげてみせた。
「これを見たまえ。これがこの室にある立体分解電子機と、もう一つ立体組成電子機の縮図だ。わしは十五年かかって、この器械を発明し、そして実物をつくりあげたのだ」
「なんです、この立体分解とか立体組成とかいうのは」
「うん、そのことだ。この説明はなかなかむつかしい。君はテレビジョンというものを知っているかね。あれは一つの写真面を、小さな素子に走査《スキャンニン
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