た。そして手の指は六本あって、どれもみな同じくらいの長さであった。てのひらはずっとせまく、指は長すぎると思うほど長かった。そういう指で、怪物は自分の顔を指さしたのである。
ポコちゃんは、返事をするにも声が出なかったから、そのかわりに大きくうなずいた。
「ぼくは、人間ですよ」
怪物がそういった。
「いや、きみは人間ではない。そんなふしぎな形をした人間が住んでいるという話を聞いたこともないし、もちろん写真や画で見たこともない」
ポコちゃんは勇気をふるって、異議《いぎ》を申したてた。
「くわしくいうと、ぼくはこの国の人間です」
と怪物はおちついていった。
「川上君。あなたはこの国の人間ではなくて、地球の人間である。そうでしょうが……」
この国の人間と、地球の人間だって? そして「川上」などと自分の名を知っているのはなぜだろう。ああ気持が悪い。たのみに思う千ちゃんは、いったいどこへいってしまったのか。
「もしもし、ぼくといっしょに宇宙艇に乗っていた者があったでしょう。千ちゃんというんですが、どこにいますか」
このだだっぴろい部屋に、ふわりとした白綿の寝床《ねどこ》――というよりも、
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