ま操縦席に、ポコちゃんの川上は、またそろそろとはって艇の後部へ。
 だが、どこまで不幸なのであろうか。そのとき、まひ性《せい》のエーテルガスがどこからか出て来て二人の肺臓《はいぞう》へはいっていった。それで、まもなく二人とも知覚《ちかく》をうしなって、動かなくなってしまった。
 カモシカ号は、どこへいく?
 二少年は、時間のたったのを知らなかったが、それから、やく二十四時間すぎた後《のち》、二人は前後して、われにかえった。気がついてみると、明かるい光りが窓からさしこんでいる。呼吸は、たいへん、らくであった。
「おやおや、これはどうしたんだろう」
 ポコちゃんの川上が、大きなあくびをしながら、立ちあがった。すると、その声に気がついたとみえ、千ちゃんの山ノ井が、操縦席の階段の下からむっくりとからだをおこした。
「ふしぎだ。重力の場へ、いつのまにかもどっている。エンジンはとまっているのに、重力があるとは、おかしい」
 足どりは二人ともふらふらであった。ふらふら同士が、ろうかのまん中でばったりあって、顔を見あわせた。
「千ちゃん、ぼくたちは、めいどへ来たんだ。しかし、じごくかな。ごくらくだろう
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