ゃないか」
「いや、しかし、それは、りくつがわかっているだけのことだ。じっさいぼくたちが、その重力平衡圏へ出てみたら、いったいどうなるんだろうねえ」
「さあ、それは……それはぼくたちのからだは、ふわりとちゅう[#「ちゅう」に傍点]に浮いたままで、下に落ちもせず、横に流されもせず、からだは鳥のように軽く感ずるのだと思うよ」
「へえっ、ふわりとちゅう[#「ちゅう」に傍点]に浮いたままで、下に落ちもせず、横に流されもせず、鳥のように身が軽くなるんだって。それはゆかいだな。千ちゃん、ちょっと、それをやってみようじゃないか」
「やってみるって、どうするの」
「だからさ、つまりこのカモシカ号から外へ出て、ちゅうに浮いてみたいのさ。ちゅうに浮いた感じは、どんなだろうね。ぼくは前から、そういうことをしてみたかったのさ。天国にいるつばさのはえた天使ね、あの天使なんか、いつもそうして暮しているんだから、ぼくはうらやましくてしかたがなかったんだ。ねえ千ちゃん、ちょっと外へ出てみようじゃないか」
 ポコちゃんは、ちゅうに浮いてみたくてたまらないらしい。しきりに千ちゃんにすすめる。
「いや、ぼくは出ないよ」

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