、あっちがアメリカだなとわかった。この大きな球である地球が、きれぎれの雲につつまれているところは、なんだかおそろしい気がしたし、またその大きい地球が、ささえるものもないのに落ちもしないのが、ふしぎであり、あぶなっかしく思われて、山ノ井も、川上も、ながく地球を見ていることができなかった。
二人が目ざす月の方は、こうしてかなり近づいたのにもかかわらず、海から出た満月ぐらいの大きさになっただけだった。月の世界につくには、まだなかなかである。
こうして、しんぼうくらべのような日が、いく日もつづいた。
地球からのラジオが、いちばんたのしいものであったが、それもだんだんと音がよわくなってきたし、局の数もへった。こっちのカモシカ号から地球へ送る無線通信もだんだんうまくいかなくなって、やがてモールス符号のほかは、地球へとどかなくなってしまった。それでも地球からは、かすかながらも無線電話がカモシカ号のアンテナにとどいた。しかしそれは、とくに大切な連絡のために使われるだけであって、一日のうちに五分ずつ、たった三回にすぎなかった。
しかしその五分間の無線電話によって、カモシカ号のことが、内地でたいへ
前へ
次へ
全91ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング