、川上はそういうものがあったらさぞおそろしかろうと思って、そういったのだ。
「ちがうよ、ポコちゃん。あれはオーロラだ。極光《きょっこう》ともいうあれだ。そして山形をしているから、あれは弧状《こじょう》オーロラだよ」
「オーロラ? ははあ、なるほどオーロラだ」
 川上は、本に出ていた三色|版《ばん》写真のオーロラを思いだした。
「あそこがちょうど北極のま上にあたるんだ。地上からの高度はいくらだったかな」
 山ノ井が、れいの増刊のページをぺらぺらとくって、オーロラの説明の出ているところをだした。
「書いてある。――弧状オーロラは高度百二十キロないし百八十キロの空間に発生する。また幕状《まくじょう》オーロラは、さらに高き場所に発生し、その高度は三百キロないし四百キロである――とさ」
「ふうん。ぼくたちはとうとうオーロラの国まで来たんだね。ゆかいだねえ」

   しんぼうくらべ

 オーロラの国も、いつしか通りぬけて、宇宙旅行の沿道のながめは、いよいよ単調で、たいくつなものとなってきた。
 なぜなら、空はどこまでいっても、うるしをとかしたようにまっ黒で、その黒い幕のところどころに針でついたよう
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