、急行列車が五六本、一度にこちらへとんでくるような気がして、ひやっとしたよ」
 そういっている山ノ井のひたいから、汗のつぶがぼたぼたと流れおちた。
 原子力エンジンは、この宇宙艇で地球から月の世界をらくにおうふくさせてくれる。それがわかっていたから、二少年はカモシカ号に乗って地上をとびだしたわけである。しかしそれはかるはずみであったと、今になって気がついた。やはり本職の宇宙旅行案内人をやとっていっしょにこのカモシカ号に乗組んでもらうのがよかった。二少年のたのみの綱《つな》は、ある雑誌の増刊《ぞうかん》で、「月世界探検案内特別号」という本が一冊あるきりだった。
 その本によると――地上からの高度六十キロメートルから百三十キロメートルの間の空間において、いん石は空気とすれあって火をだしてとぶ、これすなわち流星である――と、かんたんに書いてあるだけだった。その流星の中には宇宙艇に命中して艇をこなごなにするような大きなものがあることや、それがとんで来たときにどうして艇を安全にすることができるか、などということはちっとも書いてなかった。
 だからここまで来たのはいいが、二少年はたいへん心ぼそくな
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