がぴょんぴょんとんでいくなら、三十分もかからないでしょう」
「ぴょんぴょんとんで三十分?」
「そのかわり、きみはわしをいっしょにつれてとんでもらいましょう。そうでないと案内ができない」
「つれてとぶとは、どんなことをするんですか」
「せなかにおんぶしてもらってもいいし、あるいは手をひいて、とんでもらってもいい」
「せなかにあなたをおんぶするのはきみがわるいから――いや、えへん、えへん」とポコちゃんはうっかり口をすべらしたのを、せきをしてごまかし「手をひいてとぶことにしましょう」
川上はカロチ教授の手をとって、いわれるとおりに大地をけってぴょんととんだ。するとあらふしぎ、川上のからだは打上げ花火のようにすうっと空へとびあがった。緑の樹海が足の下をうしろへ走るようだ。やがてからだはだんだんおりてきて、タンポポの林の中に足がついた。
「そら、そこでまたとんだり」
教授がさけんだ。
ポコちゃんは、また一けり、大地をけった。からだはふたたび空中へまいあがる。なかなかいい気持だ。こんどは気がおちついてきたので、うしろをふりかえった。教授がポコちゃんの手をはなすまいといっしょうけんめいにぎって、歯をくいしばってとんでいる。第三の手が、とばされた帽子のように、あとの方にふきとばされている。
「これはゆかいだ。こんどはもっと高く、うんと遠くまでとんでやろう」
ポコちゃんはまた強く大地をけった。
樹海《じゅかい》に土煙《つちけむ》り
そんなことを十四五回くりかえしているうちに、川上と教授は、ジャンガラ星の上をどんどんまわって、やく十キロあまりとんだ。
赤土の沙漠みたいなところをとびきった。つぎはうすい緑色のまるい大きな葉が地上にはっていて、それに赤い花がついている野原に出た。その野原をとび越すと、こんどは丘がつづき、また元のようなタンポポみたいな樹海となった。
その樹海のまん中から、しきりに煙りがあがっている。
「ちょっとお待ちなさい」
樹海の入口のところの野原で、カロチ教授はポコちゃんの手を強くひっかいた。
「待てとは、なんですか」
「あの土煙りが見えるでしょうねえ。さかんに林の中からたちのぼっているあのすごい土煙りが、きみにも見えるでしょう」
あれなら、ポコちゃんは、さっきから気がついている。
「見えますとも。あれはなんですか」
「あそこですよ。悪人山ノ井があばれているのは。あれあれ、さかんに貴重な生命をうばっている。おそるべき殺害者《さつがいしゃ》だ」
「ほう、あそこに山ノ井君がいるんですか」
川上はおどろいて、林の中からあがる土煙りを見なおした。林の中から、土煙りのほかに空の方へ向かってとび出してくるものがある。それこそカロチ教授がいうとおり、貴重なる生命をうばわれた死体の一部分なのであろうか。ばらばらの手足がとび散っているのであろうか。気が変になった千ちゃんが、ジャンガラ星人とたたかって、手あたりしだいに相手のからだをひきちぎってなげとばしているのであろうか。川上はどきどきする胸をおさえて、林の上にとびだしてくるものに目をすえた。
(はて、べつに手足のようなものも見えないぞ。星人の首らしいものも見えない。なんだか葉っぱや、えだや、花がちぎれて、とんでいるようだが、殺された星人のからだはちっとも見えないじゃないか)
川上は、そう思って、ふしんの首をひねった。
「あれあれ、あのとおりだ。かわいそうに、ばらばらにひきさかれて、さかんにとばされる。ああ、おそろしい」
カロチ教授の大きな目から、涙がぼろぼろとおちる。
「もしもし、カロチ教授」
「おお、なんですか」
「あなたにはばらばらになってとぶ死骸が見えるのですか。ぼくには何も見えませんですよ」
「見えない? そんなことがあるものか。あれあれあれ、あのようにとばされている」
「あれは葉っぱじゃありませんか。花もとんでいますけれども……。あれはみんな植物じゃありませんか。ジャンガラ星人の死骸なんかてんで見えないです」
「き、き、きみはへんなことをいう。植物にもちゃんと生命がある。あれが暴行でないと、きみはいうのか」
カロチ教授のようすが、急にけわしくなった。川上には、まだ事情がよくのみこめない。
「もしもし、教授、気をしっかり持ってください。冷静になってください。あんなことをやっているのが山ノ井君だとしても、山ノ井君はべつに殺人のような悪いことをしているのではない。たかが植物をちょん切って、なげつけているんじゃありませんか。大したことではない」
すると教授は、顔から目玉を半分ばかりとび出させて、身をひいた。はげしいおどろきにうたれたらしい。
「おお、おそろしい。君も山ノ井におとらぬ悪人だ。植物の生命をとるのが平気だとみえる。そんなおそろしい心の人間にはつ
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