まだに宇宙をふらふら迷子になってとびまわっているという、きみょうな星なのさ」
 カロチ教授の話は、じつにかわった話であった。感心してしまったポコちゃんは、声も出ないで教授の異様な顔を見つめている。その教授は、話をするとき手をさかんに動かす。ことに第三の手――つまり背中からはえている手を、風に吹かれているのぼり[#「のぼり」に傍点]のように休みなく頭の上や顔の前に動かして語る。
「それはそれとして、われわれ星人のことだが、今もいったように、われらの先祖は約三十万年前に地上へ姿を現した。君たちより約五万年は早いわけだ。われわれの先祖が出る前は、海にすんでいたんだ。われらの先祖は海からはいあがって、陸上で生活するのを主とするようになった。そのころ、われわれにはこの第三の手が出来ていたんだ。これは背びれ[#「びれ」に傍点]から進化して、こんな手になったんだよ」
 そういってカロチ教授は、第三の手を伸び縮みさせながら、おもしろそうに動かしてみせた。そしていった。
「君たちは、こんな便利な手を持っていないので、まことに気のどくだね」
 ポコちゃんは、かえすことばもなく、カロチ教授の前にすくんでいる。
 いよいよきみょうなジャンガラ星である。つぎはどんなことにおどろかされるのだろうか。星人はどこまで人類より高等なのであろうか。ポコちゃんは、どんなめにあうか。千ちゃんはどうしているのか。


   すごい計画


 ポコちゃんの川上一郎と、ジャンガラ星のカロチ教授とはかたをならべてあるいたが、そのうちに二人は、小高い丘をのぼりきった。そこでポコちゃんは、はじめてお目にかかる、いようなジャンガラ星の風景におどろきの声をあげてしまった。
「やあ、すごいなあ。地平線があんなにまるくまがってらあ」
 なにしろ小さいジャンガラ星のことであるから、丘の上に立つと、星が球形《きゅうけい》になっているのがわかるのだった。りくつから考えるとあたりまえのことだが、じっさいにそれを目で見ると、きみょうなながめであった。シャボン玉の上にのっているような気がする。
 地形《ちけい》は起伏《きふく》があり、多くは、れいのタンポポみたいなふしぎな木がむらがって樹海《じゅかい》をつくっている。その間に、ハチの巣のような家がてんてんと散らばっている。おとぎの国へきたアリスのような気がするポコちゃんだった。
 右手よ
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