記憶している」
「ほんとうですかねえ、失礼ながら、ぼくたちは、そんなニュースを一度も聞いたこともないし、あなたがたが銀座通りを歩いていられる写真を見たこともありませんが……」
「わしたちは無用に地球人をおどろかしたくないから、いつも地球人には見つからないように用意をしていくんだよ。そしてね、わしたちは地球をてっとり早く調査してだいたいのことはわかってしまったのさ。日本語だって、わしが二時間ばかりかかってすっかり調べあげて来たのさ。それをもととして、ほらこのとおりしゃべれるようになったのさ。わしの日本語の発音はまずいかね」
「いえ、どうしまして。なかなかおじょうずですよ。しかしどうして二時間ぐらいで日本語がすっかりわかっちまうのかなあ」
「それはね川上君、君たち地球人の低い頭能では説明してあげても、すぐにはわからないだろう。が、ちょっとだけいうとね、地球ではまださっぱり研究に手をつけていないが電波生理学というものがあって、それを使うとかんたんにできることなんだ」
「そうですかねえ」
ポコちゃんは、そういうよりほかなかった。電波生理学なんて知らない学問だ。
「そうすると、とにかくあなたがたジャンガラ星人は、ぼくたち地球人より知能が進んでいるようですが、いったいどうしてそんなにかしこいのですか。あなたがたの方が地球人よりも年代が古いのですか」
「たいして年代が古いわけでもないがね。地球では、今から約七十五万年前に、サルからわかれて猿人《えんじん》が現れた。その後いろいろな猿人が現れ進化していったが、五十万年たったどき、新しく君たち人類の先祖がその中から現れた。それがだいたい今から二十五万年前だ。そうだったね」
「そうですね」
「ところがわしたちの先祖は、今から約三十万年前にガラガラ星の上に現れたんだ」
「ガラガラ星ですって」
「そうだ、ガラガラ星だ」
「ジャンガラ星ではないんですか」
「それとはちがう。始めはガラガラ星といって、たいへん大きな地球ぐらいの星だったんだ。ところが今から八千年前にそのガラガラ星は彗星《すいせい》と衝突してこわれちまった。そのとき砕《くだ》けた小さな破片《はへん》が、このジャンガラ星というものになったんだ。ジャンガラ星の大きさは――そうだ。日本の伊豆の大島よりは大きいが、淡路島《あわじしま》よりは小さいくらいだ。豆粒みたいな小さい星だ。そしてい
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