か」
「まさかね。でも、わけがわからないや。死んでからも夢を見るのかな。あっ、ポコちゃん、外は明かるいよ。太陽の光りだ」
山ノ井は窓を指さした。と、かれは、びっくりした。
「あ、窓から、だれかこっちをのぞいているじゃないか」
すると川上が答えた。
「あれは人の顔じゃないよ。花だよ」
「花? 花だろうか。なぜ花が窓の外に見えるのだろう。おいポコちゃん、窓から外を見てみようや」
二人は、息をはずませて、窓ガラスに顔をあてた。二人は、いったい何を見たであろうか。
怪物の顔
窓のむこうにあったものは何か。
それは一|言《ごん》でいうと、夢の国みたいな風景であった。人間の首の二倍もある大きなタンポポみたいな花がさいている。広い砂原が遠くまでつづき、その上に青い空がかがやいている。人かげは見えない。
「ふうん、いつのまにか着陸しているよ。どうしたというんだろうねえ、千ちゃん」
「ほんとだ、カモシカ号はもう飛行していないんだ。でもよくまあ、いのちにべつじょうがなくて着陸できたもんだね」
「千ちゃん、いったいここはどこの国だい」
「さあ、どこの国か、どこの星なんだか、けんとうがつかないね。ぜったいに地球ではない、といって月世界ともちがう……」
「いやだねえ、きみがわるいね」
「窓をあけて、よく外を見てみようや」
山ノ井がうっかり窓をあけた。と、思いがけない大爆発が、二少年のうしろに起った。なぜそんな大爆発が起ったのか、考えるひまもない。二少年は気をうしなってしまった。
それからどのくらいたったか、ポコちゃんの川上少年は、ふとわれにかえった。
(痛い、ああ痛い!)
はげしい痛みが、少年をなぐりつける。と、かれの記憶がよみがえりはじめた。
(あっ、どうしたろう、カモシカ号は、爆発したようだったが……)
そのうちに、かれはいま自分が横になって寝ているのに気がついて、びっくりした。
「おや、なぜぼくは寝ているんだろう……。おうい千ちゃん、どこにいるんだい」
とさけびながら、目をあけようとしたが、あまりにまぶしくて目があききれなかった。
「しずかに……。しずかに……寝ていなさい。動いてはいけません」
みょうにぼやけた声が、川上の耳にはいった。だれかが、かれのからだをおさえつけるのをふりきって上半身を起した。そのときかれは目をあけた。――そのときかれの見た異
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