いるのに――


   大爆発



     1

 怪塔は、ついに勿来関の投錨地《とうびょうち》からぬけだし、大空むけてとびだしました。ここにふたたび怪塔ロケットとなって、飛行をすることになりましたが、怪塔の上には、わが爆撃隊が落していった爆弾が、傘のようなかっこうをして、塔の行手をじゃましていました。そこへ、塔がさっととびこんでいったものですから、さあたいへん。
 どどん、がらがらがら、がんがん。
 はげしい爆発です。あたりは、まっくろなけむりでおおわれ、まるで夕立雲がひとかたまりになって下りてきたようなありさまです。
 ぴかぴかぴか、ぴかぴかぴか。
 爆発の火か、それとも電《いなずま》か、いずれともわかりませんが、目もくらむような光がきらめき、そのものすごいことといったらありません。
 塩田大尉の指揮する十数機の飛行隊は、そのまわりをとびながら、このものすごいありさまをあれよあれよとみまもっています。さすがの怪塔も、そこで粉みじんにこわれてしまったのでしょうか。
 いやいや、そうではありませんでした。
 そのとき、夕立雲のかたまりのような黒煙の上部をつきやぶり、さっと天に向けて
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