はとてもおえない」
と、くやしそうにいいました。
「じゃあ、これから僕たちは、ここを逃げだすの。つまんないや」
「そんなことをいっていられないのだ。さあ幸《さいわい》にこの扉はさっきあけたばかりだから、そこをあけて、外へとびだそう」
帆村探偵は少年をなだめながら、さっき猿の鍵であけておいた扉をさっと開きました。
二人の目には、九十九里浜が夜目にもしろくうつったことと思うでしょうが、そうではありません。扉の外には、どうしたことか、考えもしなかった土の壁が出口をぴったりふさいでいました。
検察隊
1
遭難した軍艦淡路の士官室に、この事件の検察隊本部がおかれてありました。検察隊というのは、このおそろしい事件が、どうして起ったのか、またどういう害を軍艦や乗組員にあたえたかを調べる係なのです。
検察隊長は、この軍艦の第一分隊長塩田|大尉《たいい》でありました。この大事件とともに、艦長|安西大佐《あんざいたいさ》から命ぜられたものでありました。もちろんこのほかに東京から派遣《はけん》された捜索隊《そうさくたい》や県の警察署もそれぞれに活動していましたが、塩田大
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