もりましたが、やがて思いなおしたように、
「うん、よろしい。外ならぬ遠来の珍客のことだから、案内してあげよう。こっちへ来なさい。ここから下りるのだ」
博士は魚油灯をもって先に立ち、はやそろそろと岩根づたいに下りていきます。
帆村探偵は、はじめて見るおそろしい断崖に、目まいを感じながら、博士につづいてそろそろと下りました。
博士は、なかなか元気で、先に立って、するすると下りていきます。ともすれば帆村は遅れてしまいそうです。
(博士は元気だなあ。それに、この洞穴のことをよく知りぬいているようだ)
帆村は、心の中でひそかに感心いたしました。
博士の魚油灯は、すでに断崖を下りきって、洞穴の底にある岩のうえで、うすぼんやりした光を放っています。
このとき、博士の目がきらりと光りました。博士の目は、今しも岩根につかまって、下りることに夢中になっている帆村の上に、じっととまっていました。帆村は、博士がそんな恐しい目つきをして、こっちを睨《にら》んでいるとは気がつきません。
「あっ、しまった」
一声、帆村が叫びました。
彼は、濡《ぬ》れた岩根を、あっという間に足をふみすべらし、ずるずる
前へ
次へ
全352ページ中312ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング