がよく持っている魚油を燃やしてあかりを出すという古風な魚油灯でありました。
その魚油灯は、一本の腕に支えられています。
誰でしょうか?
すると、こんどは一つの頭が、割れ目の向こうに現れました。帆村探偵は、息をこらして、なおもじっと監視していました。
怪人物は、魚油灯を高くかかげて、岩窟のなかをしきりに照らしてみております。なかなか用心ぶかいやり方でありました。
帆村はそのとき、魚油灯に照らしだされた怪人物の顔を、はっきり見ることができました。
「あっ――」
なぜか帆村は、びっくりしました。岩をだいている彼の腕が、がたがたふるえるのが、自分にもわかったほどの驚きぶりです。
それは、どうやら帆村の知っている人物であったと見えます。しかもすこぶる意外の人物であったらしいのです。それは一体、誰だったでありましょうか。
怪人物は、岩窟内に誰もいないことをたしかめると、ついにその岩の割れ目から匐《は》いあがってまいりました。そしてなおもあたりに気をくばりながら、なにかしきりに考えごとをしているらしいのです。
そのときです。帆村は岩かげからとびだしました。そして怪人物の前に、ぱっと
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