喜ぶだろうと思ったのでありました。
 だが、どうしたものか、帆村探偵の姿は一向現れてまいりません。
(帆村探偵は、どうしたんだろうか?)
 兵曹長は一向|合点《がてん》がいきませんでした。
 しかし、ぐずぐずしてはいられないので、彼は縛ってある怪塔王と、降参したその手下どもをうながして、とうとう怪塔ロケットのなかにはいりました。
 それは、間髪《かんぱつ》をいれない瞬間の出来事でありました。
 とつぜん、怪塔ロケットの入口の扉が、ばたんとしまりました。
「あっ――」
 と兵曹長がさけんだときは、もう扉がしまった後でありました。
 怪塔王も、手下も、兵曹長のために自由をうばわれ、勝手に身うごきもできない有様になっていたので、兵曹長はすっかり安心しきっていましたが、どうしたことでしょうか。いや、そのとき、何者とも知れず、ロケットの扉のかげに隠れていた者があって、兵曹長が中にはいったとみるより早く、扉をぱたんと閉めたのです。
「こらっ、誰だ。変な真似をするとゆるさないぞ。貴様たちは、俺が怪塔王の命を握っていて、生かそうと、殺そうと、どうでもなるということを知らないのか」
 とどなりました。

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