落しものでもしたと見え、背をまるくまげ、しきりに地上をさがしている様子です。なお見ていますと、その人は、深しものをしながら、だんだんこちらへ近づいてくるのでした。
「あの男は、なにを探して[#「探して」は底本では「深して」]いるのだろうか」
 小浜兵曹長は、たいへん興味をおぼえ、なおも窓のかげから、その男の行動をじっと見守っていました。
 その男はだんだん丘の方へ近づいてきます。
 そのうちに、男はふと顔をあげました。小浜兵曹長は、そのときはじめて男の顔を正面から見ることができました。
 その瞬間、兵曹長はおもわず、
「あっ、あれは怪塔王だ!」
 と叫んで、拳をにぎりました。
「たしかに怪塔王だ。あんな妙な顔をしている人間は、二人とないからな」
 それからというものは、兵曹長は、前よりも熱心にこっちへ近づいてくる男の行動をじっと見つめていました。そのうちに兵曹長は唇《くちびる》を一の字に曲げ、
「そうだ。よし、これから出かけていって、怪塔王をつかまえてやろう、あいつはまだ俺がここにいることに気がついていないようだから。うむ、こいつは面白くなった」
 と、兵曹長は自分の腕を叩いて、にっこ
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