ができるねえ」
「なんだって、鍵の形がわかっているのかね」
 そこで一彦は、昨日それを持って遊んでいたときに、湿《しめ》った砂におしつけて、鍵の型をいくつも作ったことを話しました。そして、もしかすると、昨日遊んだところに、まだ鍵の型が一つや二つは残っているかもしれないといったのです。
 それを聞いて、帆村探偵はとびあがってよろこびました。
「そいつはいいことを聞いた。ではこれからいって探してみようじゃないか」
 二人は砂丘のかげからとび出すと、どんどんかけだし、昨日一彦とミチ子が遊んだ浜辺へやって来ました。
 さいわい昨日は風も弱くて砂をとばさず、またそこは湿った砂地でありましたので、一彦の作った鍵の型は、あちこちにのこっていました。
「うむ、しめた。これなら合鍵が作れる!」
 帆村は大喜びで、一彦の手をぐっと握りしめました。

     4

 帆村探偵と一彦は、一歩一歩怪塔の入口に近づきました。そしてもう一歩で、入口の扉に手が届くというところまで近づいたそのときでありました。突然あたまの上から、破鐘《われがね》のような声がおちてきました。
「こーら、誰だ。また二人づれで来やがったな
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