た。
 綱にぶらさがって渡るのは、大得意でありましたが、なにしろ空中を猛烈なスピードでとんでいる綱をつたわるのですから、なまやさしいことではありません。ともすればひどい風の力で、体はふきとばされそうになります。
「青江、しっかりやれ」
 小浜兵曹長は、偵察席の上から腕をふりあげて、青江をはげましました。
 青江三空曹は、それに対して、かすかに頭をふって上官へあいさつをしました。
 二メートル、三メートルと、青江の体はすこしずつ向こうへうごいていきます。
 小浜兵曹長は、この勇ましい若武者のはたらきをすぐさま本隊あてに、無電で報告いたしました。
 すると折《お》りかえして本隊から、
“わが帝国海軍戦史のあたらしき一ページは、青江三空曹のこのたびの壮挙により、はなばなしくかざられたり”
 と、光栄にみちた感状の無電がとどきました。
 これをうけとって、小浜兵曹長は、わがことのようによろこび、
「おい青江、司令官から感状だ!」
 とさけびましたが、夢中に綱をわたっている青江三空曹には、きこえた様子もないのは、ざんねんでありました。
 それにつづいて本隊からは、新手の攻撃機隊がいま現場にむかっ
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