はっはっ、ざまを見ろ」
怪塔王は、なおもからからと笑いつづけます。
怪塔王とは一体何者でしょうか。しかしとにかくこの怪塔に、おどろくべき最新科学による仕掛《しかけ》がしてあることは確《たしか》です。
では、いま沖合に坐礁している軍艦淡路の事件とも、なにか関係があるのではないでしょうか。それにしてもあの勇敢な帆村探偵は、なぜしっぽをまいて逃げだしたのでしょうか。
砂丘
1
帆村探偵と一彦少年とは、怪塔王にどなりつけられましたので、一目散に逃げだしました。怪塔からものの五百メートルも走ったところに、砂が風のため盛りあがって丘になっているところをみつけましたので、二人はこれさいわいと、そのかげにとびこみました。
砂丘のかげから、後《うしろ》の怪塔をふりかえってみますと、別に何者もこっちへ追いかけてくる様子もなく毒ガスらしいものも見えないようです。二人はほっと安心のため息をつきました。
「なあんだ、おじさんは探偵のくせに、ずいぶん弱虫なんだね。これはかなわん、にげろにげろ――などと大きな声を出して逃げるなんて……」
と、一彦は砂丘のかげに寝ころがったまま
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