向いています。
「あっはっはっ。なにをしたって、お前たちに入口のドアがあいてたまるものかい。あっはっあっはっ」
 怪塔王は、壁を眺めてはからからと大声で笑っています。
 そうです、この壁には、どうしたものか、塔の入口と同じ光景がうつっていて、その前に、帆村探偵と一彦とがうろうろしているのがうつっています。まるで映画がうつっているようにも見え、また魔法の鏡がかかっているようにも見えます。なにしろ塔の下の入口の光景が、このように塔の階上の室で見えるのですからね。
「あっはっはっ。まだ諦《あきら》めよらんな。それでは一つおどかしてくれるか」
 そういいながら、怪塔王は机の上から長い管《くだ》のついたマイクロフォンをとりあげて、口のそばに持っていくと、
「おいおい、なぜうちのまわりをうろうろしているんだ。ははあ、鍵穴をのぞいたな。変なまねをしていると、今に頭の上から、毒ガスをぶっかけるぞ」
 帆村と一彦の頭の上からふってきたのは、それは破鐘《われがね》のような大きな声でした。
「これはかなわん。おい一彦君、はやく逃げるんだ」
 と、帆村探偵はふだんにも似ず、弱音をはいて逃げだしました。
「あっ
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