殊《こと》にここは、隣家というものもないふかい海底に、横だおしになっている怪塔ロケットの中です。鬼気はひしひしと迫り、毛孔は粟《あわ》のつぶのようにたちます。
「なあに、そんなおどかし文句に、誰がのるものか」
と帆村は、ふりはらうように言いかえしました。
「それなら、マスクをはやく。――」
と怪塔王は、せきたてます。
帆村は、ついに変な気持にとらわれながら、なにほどのことがあろうかと気をふるいおこし、両手を怪塔王の首のうしろにまわして、風呂敷の結び目をときにかかりました。そのとき、さすがの帆村も、この覆面の下の怪塔王の顔を見るのをおそろしく感じたものか、怪塔王の首のうしろにまわした両手が思わずぶるぶるとふるえました。
怪塔王は、そうなるのを、さっきから熱心に待っていたようです。
「やっ!」
大喝一声《だいかついっせい》、怪塔王の膝頭《ひざがしら》は、帆村の下腹をひどいいきおいでつきあげました。腹の皮がやぶれたろうと思ったくらいです。何条《なんじょう》もってたまりましょう。
「う、ううん。――」
苦しそうなうめき声とともに、帆村の体は棒のようになってたおれました。
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