だ、もういい加減に降参したがいいだろう」
 どこかで聞いたような声ですが、三階の階段のかげから叫びました。階段のかげにうずくまっている一|箇《こ》の人影――こっちへ顔を出したところをみればそれは例の汐《しお》ふきそっくりの怪塔王の顔でありました。彼は一体誰に、(もう降参をしろ)などとよびかけているのでしょうか。

     2

 怪塔のなかの不思議な会話です。
「だ、誰が降参するものか。このインチキ怪塔王め!」
 おやおや、そういう声はたしかに、怪塔王の声でありました。そう叫んだ人物は、どこにいるかとさがして見ますと、一階の階段のうしろに隠れて、こっちをうかがっている一箇の怪人物がそれでした。どうしたのか、この人は、自分の首を黒い風呂敷みたいなもので、すっかり包んでいます。
 そうです、この方が『声の怪塔王』でありました。三階の階段から顔を出している方が『顔の怪塔王』でありました。つまり二人の怪塔王は、たがいに勝手気ままな号令を出して、操縦士の黒人をこまらせていたところでありました。声の怪塔王と顔の怪塔王との戦《たたかい》は、まだつづいていたものと見えます。二人の怪塔王なんて、変なは
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