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「ああ塩田大尉」
「おお一彦君か。おやミチ子さんもいるね。二人ともうれしそうだな――一彦君、よろこびたまえ。今院長さんに聞いて来たんだが、君の傷はもう大丈夫だそうだよ」
 三人は、声をあわせてうれしそうに笑いました。
「塩田大尉、僕と約束のこと忘れていませんね」
「え、約束。うむ、あのことか。しかしあのことはまあ、僕にまかせておいて――」
「いやだなあ、あんなことを言っている。僕はどんなにか待っていたんですよ。ぜひお伴《とも》させてください。それが帆村おじさんを救う近道のように思うんです」
 塩田大尉は、しばらく無言でいましたが、やがてミチ子に向かい一彦をつれていってもいいかと尋ねました。ミチ子はもちろんそれに賛成しましたのでそれならばと塩田大尉は立ちあがりました。
「僕が心配するわけはいずれわかるだろうが、とにかく変り者の大利根博士のところへいくのは、これでなかなか大仕事だよ」
 塩田大尉は二人の頭をなでながら、ほんのちょっぴり、気持を言いあらわしました。大尉は、帆村の言伝《ことづて》を聞いてからのち、いろいろ考えた末、大利根博士を訪問することをたいへん重大に思
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