達しはしまいと思っていたのです。
 ところがどうでしょう。間もなくふもと村の中から一本の煙がむくむくと、風のない空に、まっすぐ立ちのぼりはじめました。
「おやおや、村でも煙火みたいなものをあげたぞ。こっちの真似をする気かしら」
 と爺さんが目をみはっているうちに、その村の煙火が、下の方から長短の符号どおりに切れはじめたのですから、爺さんは大びっくり、紙きれにその符号をうつし始めました。
 一体村の煙火は、山の中へ向かって何を伝えているのでしょうか。


   塩田大尉のお迎え



     1

 ふもと村から、煙の信号がたちのぼるのが見えます。一彦少年は炭やき爺さんの手をかりて、その信号の見えるところまで、傷ついた体をうごかしてもらいました。
 ふもと村からの信号は、どんなことを伝えて来たのでしょうか。
「シオダタイイガムカエニイク」
 塩田大尉が一彦をむかえにいくというのでありました。塩田大尉のところへ、どうしてそんなにはやく知れたものかと、一彦は夢のようにおどろきましたが、このとき塩田大尉は、ちょうど飛行基地から警察電話で、このふもと村へ昨日以来、何か聞きこんだことかまたは変っ
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