の機械が、がたがた鳴り、体の軽い怪塔王はふきとばされそうです。
「ううー、なに負けるものか」
怪塔王は歯をくいしばり、さらに下舵《さげかじ》をとって、怪塔ロケットの頭を下げ、向こうへ逃げようとしましたが、そのとき、
「待っていたぞ。小浜兵曹長はここにおる。青江のかたきだかくごしろ!」
と、小浜機が正面からつきかかってきました。怪塔王は磁力砲をそっちへ向けましたが、それはすぐはねかえってきました。
「ざ、残念! わしの発明したあべこべ砲で、こうもひどくやられるとは!」
怪塔王は、まっ青になりました。もうのがれる道はないかと下を見れば、ちょうどいいあんばいに、例の丘のうえをすれすれにとべば向こうへぬけられそうです。
「うん、しめた。あの道一つだ!」
と、舵をひねって、ひゅーっと燕《つばめ》のように丘の上にまいさがり、いまそこをとおりすぎようとしたとき、丘は天地もくずれるような大爆音もろとも爆発してしまいました。空は一面火のかたまりです。下からふきあげる岩や泥は、まるで噴火山のようでありました。怪塔の胴中が、まっ二つに折れたところだけは見えましたが、それから先どうなったかわかりません。焔と煙とが、すべてを包んでしまいました。
4
怪塔王の最期!
白骨島の爆発は、なおもそれからそれへとつづき、天地はいよいよくらく、地獄のような火は島の上を炎々と焼きこがしていきます。怪塔王の体はおそらくもう煙になって天へのぼってしまったことでしょう。
怪塔ロケットを撃ちまくっていた攻撃機の乗組員たちは、すんでのところで、怪塔王のあとを追うところでしたが、正しい者をまもりたまう神の力によって、もうすこしというところで難をまぬかれました。しかしさすがの勇士たちも、しばらくはどうして舵をひいたのか、操縦桿をうごかしたのか、誰も覚えていなかったといいます。気がついたときは、五千メートルの上空を、くるくると木の葉のように舞っていたということです。大爆発とともに、めいめいに空高くふきあげられたものらしく、機体がこわれなかったのがふしぎでした。
なぜあのような大爆発が起ったのか?
それは怪塔ロケットの放った強い磁力が、あべこべ砲のためにはねかえされ、怪塔ロケットが丘をこえるよりも一分前に、すでに導火線には火がついていたのです。そしていま爆破するというときに、怪塔ロケットが自らとびこんでいったのです。
塩田大尉をはじめ、小浜兵曹長や帆村探偵も、みな無事に艦隊へ帰りました。そこには一彦少年が、勇士たちの帰りを待ちかねていました。そしてみなみな元気で凱旋《がいせん》の途につきました。
「ねえ、帆村おじさん、なぜ大利根博士は、怪塔王になったりして悪いことを働いたんだろうねえ」
一彦少年は、甲板の上から、白骨島におわかれをしながら、帆村にたずねました。
「あれはね、こうなんだよ。大利根博士は、今世界をひっくりかえそうと企んでいる秘密結社の一員だったのだ。日本のためには、全くあぶないところだったよ」
といって、探偵は大きな溜息をつきました。
底本:「海野十三全集 第6巻 太平洋魔城」三一書房
1989(平成元)年9月15日第1版第1刷発行
初出:「東日小学生新聞」東京日日新聞社
1938(昭和13)年4月8日〜12月4日
入力:tatsuki
校正:kazuishi
2007年1月5日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全88ページ中88ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング