れをみてください。たいへんものものしく大きいが、空からなげおろした通信筒のようです」
「なに、通信筒か」
「はい、いま引抜きます」
 つねに目ざとい帆村が見つけだしたその通信筒からは、なにが出て来たでしょうか。彼は筒の中から一枚の大きな紙をみつけてひろげました。あけてみるとびっくりです。それは、血で書いた奇妙な文字の行列です。
「なんだ、これは」
「おお、これは怪塔ロケットの中にいる黒人が書いてよこしたものです。文を読みますと――スグ丘ノ小屋ノ積藁《ツミワラ》ノ下ニアル導火線ノ仕掛ヲ取リノゾカナイト、ワガロケットガ、ソノ上ヲ低空飛行シタノチ、一分以内ニ全島ガ爆破スル、注意セヨ。黒イ鳥」


   天罰



     1

 全島爆破の導火線!
 それが、丘のうえの小屋のなかに積みかさねられた藁の下にある!
 なんというおそろしい仕掛でしょう。しかも怪塔ロケットがやがてこれにちかづけば、わずか一分のうちに爆発するというおどろくべき黒人からのしらせです。
「さあ皆さん、ぐずぐずしてはいられません。飛行機はすぐ滑走できるように用意をしてください。僕はこれからあの丘をのぼって、小屋にかくされている全島爆破の導火線を切ってまいります」
 そういいすてて、帆村探偵はすぐ走りだしました。
「おい、帆村君、待て」
 とさけんで、そのあとを追いかけたのは小浜兵曹長でした。
「君ばかりはやらぬ。俺も共に行く」
 そういっているときでありました。天の一角に、ぶうんと怪しい物音。まるで腸《はらわた》をかきまわすようなその怪しい音は、まさしく怪塔ロケットがこっちへ飛びもどってきたらしいのです。塩田大尉ははっとして、
「おい、小浜兵曹長、それから帆村探偵もこっちへかえれ、もう丘の上へ行っているひまがない。早く飛行機にのれ。おい、はやくこっちへ帰ってこい」
 と、さけびました。
 大尉の命令がでたのですから、もう仕方がありません。二人とも廻れ右をしてかえってきました。
「あれをみよ。怪塔ロケットがこっちへ近づくぞ。はやく飛行機へのりこめ。下手をすると、滑走しているうちに、この島が爆破するかもしれない」
 塩田大尉の命令一下、全員は攻撃機にのりこみました。小浜、帆村の二人は、二番機に席をあけてもらって、そこへ乗りました。プロペラは廻る。三機の攻撃機は、編隊もあざやかに地上を滑りだしましたが、そのとき怪塔ロケットのびっくりするほど大きな姿が目の前にありました。

     2

 攻撃機は編隊飛行もあざやかに、白骨島を離陸して、空中にとびあがりました。
 編隊長機からは、塩田大尉が無電をもって、二番機と三番機にひっきりなしに命令をつたえています。
「総員、戦闘配置につけ」
 二番機では、無理にのった帆村探偵は、操縦席についている小浜兵曹長のうしろに、できるだけ体を小さくして、つかまっています。はげしい風が、帆村探偵の鼻や口を真正面からひどくおしつけ、そのくるしさといったらありません。
「二番機は、丘の上を向こうへこえて反転、怪塔ロケットの前面を上空から押さえろ。三番機は、編隊長機につづいて、怪塔ロケットを襲撃!」
 命令とともに、二番機はただちに編隊列をはなれました。そして導火線の埋っている丘の上空をとびこえて、やがてあざやかな反転にうつりました。
 そのとき塩田大尉の編隊長機と三番機とは、全力をあげ、ほとんど垂直上昇で、進みくる怪塔ロケットの上に出ました。
 そこへ怪塔ロケットは、もうもうたる白いガスを尾部からふき出しながら、舞いおりてきました。黒人が知らせてきたとおり、怪塔王はいよいよ丘の上に近づいて、白骨島爆破の導火線を磁力砲の力で点火しようという考えとみえます。
 タタタタン、タタタタン。
 挑戦するように、上からは編隊長機と三番機の機銃射撃です。怪塔王は、ガラス窓のところにものすごい形相の顔をつき出し、
「うぬ、邪魔をするか。機銃の弾丸など、何の役に立つものか。この磁力砲でもくらえ」
 と、猛烈な磁力を怪塔の尖端から出しますと、紫の光がさっと空中を流れて上へ!
 あぶない編隊長機と三番機! そのとき、それを待っていましたとばかり、塩田大尉はあべこべ砲のスイッチを入れました。

     3

 あべこべ砲のスイッチの入れかたが、もうすこし遅かったら、塩田大尉ののっている編隊長機も、三番機も、翼をもがれて墜落のほかありませんでした。しかし一足お先に、あべこべ砲がつよい磁力の流《ながれ》をおさえて、それを地上へはねかえしました。
「あっ、こいつはあぶない!」
 叫んだのは、怪塔王です。自分の放ったつよい磁力が、向こうからはねかえってきて、いましも彼がのぞいていた窓をあっという間にとろとろにとかし、大穴があいて、そこからつよい風がふきこんできました。塔内
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