ではないかと、いくたびも考えなおさずにはいられませんでした。
「いや、間違なく、大利根博士が怪塔王だったのだ!」
 帆村は、はっきり自分にいいきかせました。それにちがいないのです。
 ただ、この上のふしぎは国宝的科学者ともいわれているあの大利根博士が、仮面をむけば、なぜあのように憎むべき怪塔王であったかという謎です。それこそは、どうしても解かねばならぬ大きな謎でありました。おそろしい怪塔王の仕業《しわざ》も、みなその謎の中に一しょに秘められているのにちがいありません。なぜ? なぜ? なぜ?
 帆村の勇気は百倍しました。わが海軍の機密を知りぬいている大利根博士が、あの怪塔王だとしたら、これは一刻もそのままゆるしておけないことです。ぜひとも怪塔王をとらえて、そして、なぜ怪塔王がそんなわるいことをするのか、その大きな謎をとかなければ、国防上これはたいへんなことになります。
 怪塔王は一たん死んだものとおもわれましたが、ここにきて、残念ながらそれを取消さなければならなくなりました。
 怪塔王は、まだ生きているのです。岩窟の中で見た大利根博士こそは、外ならぬ怪塔王の姿だったのです。ですから怪塔王は、ただ生きているどころのさわぎではなく、あの岩窟を出て、なにかまた悪いたくらみをしようとしていたのにちがいありません。
 大利根博士の姿をした怪塔王は、いまどこでなにをしているのでしょうか。
「こうしてはいられない!」
 帆村は、潮鳴る洞門のかなたを、きっとみつめました。


   ああ上官



     1

 さてお話は、小浜兵曹長のうえにうつります。兵曹長は、帆村とわかれ、怪塔ロケットへむかいました。黒人たちは、もうすっかりおとなしくなっています。主人のなくなった黒人たちは、まるで虎が猫になったようなものでありました。
 兵曹長は、殺人光線灯を身がまえながら、怪塔の無電室にはいっていきました。そして、さっそく、秘密艦隊をよびだしたのでありました。
「塩田大尉にねがいます。こちらは白骨島において小浜兵曹長です」
 そういって、無線電話をもって、しきりによびかけました。
 艦隊は、そのとき空と海面との両方から、まだ空中にのこっている敵のロケットやら、また海面におちながら、まだ降参しないでうってくる敵の生き残りの者どもと、しきりに戦闘中でありました。
 もちろんこの戦闘は、秘密艦隊の勝となった模様です。しかし、空中に残る一台のロケットがなかなか降参いたしません。それは敵の隊長がたいへん抵抗するためでありました。この最後の一台のロケットが、どういうものかなかなかつよいのです。いささか手をやいているとき、小浜兵曹長からの無電がはいり、軍艦六甲の艦橋にいた塩田大尉がマイクロフォンの前にでました。
「おお、小浜兵曹長か。こちらは塩田大尉だ。お前はよく生きていたな。おれはたいへんうれしいぞ」
 と、まず大尉は、部下の無事をよろこびました。こっちは小浜兵曹長です。上官の声をきいて、どんなに気がつよくなったかわかりません。
「ああ塩田大尉、私も上官のお声を耳にしてどんなにか嬉しゅうございましょう」といいましたが、とたんにおもわず胸のなかが一ぱいになりました。

     2

 塩田大尉と小浜兵曹長の無線電話は、つづきます。――
「塩田大尉、私と帆村探偵とは、首尾よく怪塔王をやっつけてしまいましたから、どうかごあんしんねがいます」
 と、小浜兵曹長は報告しましたが、それは小浜のおもいちがいで、怪塔王はやっつけられもせず、あいかわらず生きてあばれているのでありました。帆村と怪塔王との出くわしについては、なにも知らぬ小浜兵曹長です。そういうぐあいに報告するのも、むりではありません。
「そちらの戦闘の様子はどんな風でありますか」
 これにたいして、塩田大尉は、敵の大敗北であることを報告したうえ、まだあと一台の敵ロケットがしきりに抵抗していることをつたえました。
「――われわれは、その一台をおとすまでは大いにがんばって闘うつもりだ。そのうえで、白骨島へ突入する考えだ、そこは怪塔王の根拠地だからな」
「あっ、こっちへ来られますか。それはますますうれしいです。まったくこの白骨島は、いかにも怪塔王の巣らしく、たくさんの謎にみたされており、そしてまた、いろいろの武器もあるようですよ」
 そういって兵曹長は、いままでに見たり聞いたりしたことを、いろいろとならべました。それが秘密艦隊にとって、どんないい報告だったかいうまでもありません。艦隊では、いよいよ白骨島を一番おしまいの目的地として、すすむことになりました。
 そうなると、いまのうちに早く、敵のロケットをうちおとさねばなりません。空からは飛行機隊が、海面からは艦艇が、力をあわせて最後のロケットめがけて攻めかけました。
 
前へ 次へ
全88ページ中82ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング