すか」
「それはやはり、怪塔の科学者が、このように軍艦の鉄板などをどんな力でとかしたか、それを調べるのが先ですな。それがわかれば、その怪力に感ずる、例えば受信機のようなものを作って飛行機にのせ、空中をとびながら、怪力の強くなる方角へとたどっていけば、きっと怪塔のあるところへ行きます」
「なるほど、それはいい方法ですね。するとこの怪力を博士に調べていただかねばなりませんが、何日ぐらいかかりますか」
「さあ、そいつはよくわからんが[#「わからんが」は底本では「わかんが」]――」といって、大利根博士は額にしばらく手をあてていましたが、
「まあ、この通風筒の鉄板などをもってかえって、できるだけ早く調を終えることにしましょう。じゃあもう帰りますよ」
「博士、もうおかえりですか」
「こんな落ちつかぬところじゃ、いい考えも出ませんよ。はい、さようなら」
そういって、大利根博士は後をふりむきもせず、すたこら帰っていきました。
2
それといれちがいに、小浜兵曹長が甲板へ飛出してきました。
「塩田大尉、一大事ですぞ」
「なんだ、小浜、お前にも似あわず、あわてているじゃないか」
「あっはっはっ、あわてているかもしれませんね。とにかく怪塔ロケットの行方がわかりかけたのです」
「なに、怪塔ロケットの行方が――」
と、塩田大尉がびくりと太い眉《まゆ》をうごかし、
「ほう、それはうまい。しかし大利根博士は、怪塔から発射する例の怪力の正体がわからないうちは、とても怪塔の行方はわかるまいと言っていられたぞ」
「博士はそんなことを言われましたか。しかし、いま無線班は、怪塔から出していると思われる無線電信をつかまえたのです。それは非常に弱い無線電信で、しかもはじめは、たった二十秒間ほどしかきこえませんでしたが、たしかに軍艦淡路を呼んでいるのです」
「ほうほう」
と、塩田大尉は前にのりだしてきた。
「なにか信号の意味でもわかればいいと思って苦心しましたが、たしかに電文をうっているのですが、符号がきれぎれになって、よく意味がききとれません。しかし淡路の呼出符号だけは、幾度もくりかえされるので、ははあ、こっちを呼んでいるなと、わかるのです」
「うむ、それから――」
と、塩田大尉はあとを催促いたしました。
「そこで、向こうが何をいっているのかを、聞きわけることはあきらめまして、その代りそ
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