と、つづいてまた一発!
しかし怪塔王はつづいてにやにや笑っているばかりです。
三発目を、帆村が撃とうとすると、怪塔王は手をあげてとめました。
「これ、無駄にたまをつかうなよ」
「なにっ!」
「なにもかにもないよ。ほら見るがいい、貴様のうったピストルのたまは、こんなところに宙ぶらりんになっているじゃないか」
そういって怪塔王は、寝床の上から長い指を帆村の方にむけました。
はじめのうちは、帆村には、何のことやら、さっぱりわけがわかりませんでしたが、よくよく怪塔王の指さしたところを見ると、なるほど奇怪にも二発の弾丸がまさしく宙ぶらりんになっています。それはちょうど、帆村と怪塔王との向きあった真中のところです。二発の弾丸は下にもおちず、お行儀よく頭をそろえて向こうを向いているではありませんか。
「おじさん、怪塔王は魔法をつかっているのだよ」
と、一彦が早口で帆村にささやきました。
「あっはっはっ、そのちんぴら小僧は魔術といったな。魔術なんて下品なものではない。これこそ、わしの得意とする磁力術じゃ」
磁力術? 磁力術とはなんのことでしょう。鉄をすいつける磁石の力のことらしいのですが、そんな強い磁石があるのでしょうか。
「ほら見なさい。貴様のうったたまは、わしがつくってある目にみえない磁力壁をとおりぬけることができんのじゃよ。さあどうだ、降参するか」
6
あまりにも不思議な怪塔王の力に、帆村も一彦も、ぼんやりしてしまいました。ピストルを撃っても、弾丸が途中で壁の中に埋まったように停ってしまうのですから、ピストルなんか何の役にもたちません。
軍艦淡路をひきよせたというのも、これと同じ力をつかったのだと、怪塔王は秘密をもらしましたが、なんという恐しい力があったものでしょう。またここはなんという気味のわるい塔でありましょう。
といって、帆村も一彦も、ここで怪塔王に降参するつもりはありません。そんな女々《めめ》しい考《かんがえ》はすこしも持っていません。力のあらん限り、どこまでもこの怪人をやっつけなければならぬと、かたく決心をしていました。
「ははあ、二人ともむずかしい顔をしているじゃないか。まだ何か、わしに手向かう方法はないかと考えているのだな。あっはっはっ、そうはいかないよ。こんどは、わしがお前たちを片づけてしまう順番だ。覚悟をするがいい」
という
前へ
次へ
全176ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング