るのか)
 と、小浜兵曹長は、背中がぞっとさむくなるのをおぼえました。
 だが、こんな魚に食べられてしまうのは、ざんねんです。なんとかここを逃げだす工夫はあるまいかと、兵曹長は壁をのぼるつもりで、ちょっと手をふれてみましたが、壁はぬらぬらしていて、とてものぼることはできません。さすがの勇士も、しょげていますと、その時、
「小浜さん、今たすけてあげますよ」
 と、とつぜん頭のうえで、おもいがけぬ声がしました。兵曹長はおどろいて立ちあがり、上を見上げました。そのとき、上から一本の綱がするすると下って来ました。


   生きていた帆村



     1

 おそろしい海底牢獄へ、とつぜん下された綱一本!
 兵曹長は、夢かとばかりにおどろきました。とにかく先のことはわかりませんが、これ幸《さいわい》にまずこの海底牢獄からぬけだしたがよいと思いましたので、綱につかまってどんどんあがりました。
 煙突のようにほそ長い海底牢獄を、綱をたよりにぐんぐん上へのぼっていきますと、もうあとすぐ天井にぶつかりそうなところに、一つの横穴があいていました。
 綱は、そこから下へおろされているのでありました。
「おお、ここにぬけ穴があったか」
 小浜兵曹長が、その横穴をひょいと見ると、そこに命の綱を一生懸命に引張っている帆村荘六の姿が、電灯の光に照らされて見えました。
「おお帆村君か。君は無事だったのか」
 と、うれしさ一杯で、思わず兵曹長がさけびましたところ、帆村は、
(しーっ。黙っていてください)
 と、眼と身ぶりでしらせました。
 どうやら帆村は、小浜兵曹長すくいだしの途中で、怪塔王に気どられることを、たいへんおそれているようでありました。
 小浜兵曹長にも、すぐそれがわかりましたので、あとは黙々として綱をたぐり、帆村のいる横穴へ匐《は》いこみました。
「帆村君、助けてくれてありがとう」
 と、兵曹長が思わず帆村の方へ手をさしだせば、帆村もそれをぐっと握りかえし、
「いいえ、たいしたことではありません。それより僕は、思いがけなく、小浜さんを迎えることができて、どんなにかうれしいんです」
「君こそ、よくこの島にがんばっていてくれたねえ。この島は怪塔王の根拠地らしいが、一体、怪塔王は何を計画しているのかね」
「それはいずれ後からお話しします。しかし、今は、それをお話ししているひまがないので
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