怪塔ロケットを追うどころか、こうして飛んでいることがあぶなくなりました。小浜兵曹長は、荒れくるう暴風雨を相手に、腕も折れよと操縦桿をにぎり、両足[#「両足」は底本では「雨足」]をふんばって、この危機をぬけようと必死の努力をしています。が、雨と風とにたたかれ、いまは海面に車輪がすれすれの低空飛行です。ああ!

     3

 たのみにおもう無電はきかず、愛機は雨と風とにたたきつけられ、ともすれば車輪がざざーっと怒濤《どとう》に洗われます。一たびは空中にいのちをひろいながらも、ついに今ここに小浜兵曹長の運命もおわるかとおもわれました。
「敵陣に自爆するのなら帝国軍人の本懐であるが、あれ狂う海中につっこんで、死んで何になるのだ。よし、俺はどうしてもこの暴風雨と海とを征服してやるぞ」
 兵曹長は、機上でこう叫びました。
 飛行眼鏡もすっかり曇って、もう駄目です。翼はいくたびか波浪にばっさりと呑《の》まれそうです。人力ではどうすることもできない自然力の猛威です。
 それでもわが小浜兵曹長は、飛びつづけました。それは二時間半というながい時間の後でありました。どこをどう飛んだか、ちっとも油断のならない二時間半の飛行に、さすがの勇士も、気力も体力もくたくたになってしまいました。いよいよ翼を波にぱくりと呑まれる時がやってきた、と思いました。
「ざんねんだ。青江のかたきをとらないうちに死ぬなんて、じつにざんねんだ」
 兵曹長は、歯をくいしばり、眼をしばたたいて、眼下の真白な波浪をにらみつけました。そのときです。彼は、ふと前方に、まっくろな鯨《くじら》のようなものがよこたわっているのに気がつきました。
「あっ、あれは何だ。鯨か?」
 眼をしきりにぱちぱちやって、この黒影を見ていた兵曹長の頬に、さっと血の色がわきました。
「あっ、あれゃ島だ! 島だ!」
 島が見つかったのです。死の一歩前に、島影が見えるなんて、何という天佑《てんゆう》でしょう。
 小浜兵曹長の元気は百倍しました。
「何としても、あの島まで辿《たど》りつかなければ――」
 それから先は、夢中でありました。どこをどう飛んだのか、気のついたときは、飛行機のエンジンはぴたりととまっていました。

     4

 小浜兵曹長は、夢のようにあたりを見まわしました。
 嵐は、あいかわらずごうごうと吹きまくっていますが、飛行機の下にあ
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