ゃないか。あれは飛行機が怪塔を攻めて、空から爆撃していたんだよ」
「ほうほう、なるほどあれか。わしは演習をやっているのかと思っていたんだ」
「演習だなんて、爺さんはのんきだなあ。そしておしまいに大きな塔が尾をひいて、空中にとびだしたじゃないか。あれが怪塔だよ。僕は、あの塔の中から逃げだしたんだよ」
3
「ああそうか、あれが怪塔かね。あれならわしも見たぞ。いま聞けば、お前はあの中から逃げて来たというが、一体どうして、また怪塔の中なんぞにいたのかね」
炭やき爺さんは、目をまるくして、それからそれへと一彦少年にたずねました。
一彦としては、お爺さんにしてきかせる山ほどの話をもちあわせていましたが、そんなことよりも、一分でもはやく、塩田大尉に知らせ、一彦が怪塔から逃げだすまでに起ったいろいろのことを、報告しなければならぬとおもいましたので、
「ねえ、お爺さん。ぐずぐずしていると、怪塔王のため日本の軍艦がどんなにひどくこわされてしまうかわからないんだよ。だから僕はね、すこしでもはやく海軍の軍人さんかお巡《まわ》りさんかにあいたいんだよ。いそがないと、たいへんなことになるんだ。ねえ、お爺さん。すまないけれど、山をくだって、誰かに僕がここにいるということを知らせてくれないか」
一彦は熱心を面《おもて》にあらわして言いました。
日本の軍艦がひどくこわされてしまうと言う話を聞いて、炭やき爺さんはとびあがるほどおどろきました。なぜと言って、この爺さんの一人息子は水兵さんで、いま軍艦にのっているのです。軍艦は大切ですし、一人息子も大切です。
「ようし、じゃあこれからわしが村の衆《しゅう》へ知らせよう。待てよ、早くしらせるには、これから山をくだるよりももっといい方法があったっけ。もっともこれは、天地のひっくりかえるような大事件の時でないと、使ってはならぬと、村の衆とのあいだの申し合わせじゃが、怪塔王が日本の軍艦をめりめりこわすと言うのなら、この非常警報をつかってもかまわんじゃろ」
そう言うと、お爺さんは腰にさげていた鎌《かま》をとって、傍に生えていた太い竹を切りおとし、ころあいの長さにして穴をあけました。お爺さんは、なにをこしらえているのでしょうか。
4
「お爺さん、竹を切って、それで一体なにをつくるの」
と、一彦は、お爺さんの手に握られた鎌が、器用
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