、何千万キロ先のひろびろとした宇宙のまっ只中《ただなか》めがけて旅立つのだ。
 帆村荘六は、三根夫に、あと三時間の自由行動をゆるした。そして本日十三時に東京発の成層圏航空株式会社の『真珠姫《しんじゅひめ》』号に乗りこんでニューヨークへたつこととなった。それに乗れば目的地へ五時間でつく。
 三根夫は、すっかりうれしくなり、顔をまっ赤にほてらせたまま、往来《おうらい》へとびだした。この三時間に、かれは宇宙旅行の準備をととのえるつもりだった。必要だと思ういろいろな品物を買いそろえなくてはならない。
 それから、いとまごいをしておきたい先生や友だちも四、五人あったが、それを全部まわる時間はないかもしれない。テレビ電話をかけて、それでまにあわせることにするか。
 いとまごいをするのは、それだけだ。三根夫には両親も兄弟もない。兄弟は、はじめからない。両親は、はやくに亡《な》くなった。だから、一番近いみよりといえば、帆村伯父だけであった。
「さあ、なにを買って、持っていこうかなあ」
 三根夫は商店街を歩きまわった。そしてぜひ必要だと思うものを買い歩いた。
 たとえばかれは十冊ぞろいの名作小説文庫を買
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