することもできる。その外にやはり原子力をりようしたロケット推進器がついており、航続時間は約千時間というから、四十日間は飛べる力を持っている。
 そのほか、空気清浄器や食糧いろいろの貯蔵もあり、娯楽用の小説やトランプもあり、聖書《バイブル》とハンドブックもあった。
 これだけの用意ができている空間漂流器だったから、乗組員はじゅうぶん安心して、これに生命をあずけておくことができた。
 だが、それだけで安心するにははやい。なぜなれば、もし第六号艇が、テッド博士のおそれる第二の爆発を起こすようであったら、その附近から大して遠くはなれてない空間漂流者たちは爆発とともに、まず生命はなくなるものと思わなければならない。
「おい、ゲーナー君。なぜきみは早く退避しないのか」
 無電で、隊長テッド博士が、ゲーナー艇長を叱《しか》りつけるようにいった。
「もうすぐ退避する。二十八名、二十八名だ。まだ一名艇内に残っている者がある」
 少佐は、艇員がもう一名残っているのを気にして、じぶんは危険をおかして踏みとどまっているのだ。
 それを聞くと隊長テッド博士は、胸が迫ってきた。
「ゲーナー君。きみは数えまちがえて
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