したかった。
 だが、そんなことはゆるされない。艇外へとびだしたとて、何のやくに立とうぞ。
 第六号艇のまわりには、僚艇《りょうてい》から放射する探照灯《たんしょうとう》が数十本、まぶしく集まっていた。その中には、空間漂流器を身体につけて、艇からばった[#「ばった」に傍点]のようにとびだす乗組員たちの姿もうつっていた。また、すでにその漂流器にすがって空間をただよっている乗組員たちの姿をとらえることもできた。それはどこかタンポポの種子《たね》ににていた。上に六枚羽根のプロペラがあり、それから長軸《ちょうじく》が下に出、そして種子の形をした耐圧空気室があった。人間はこのなかへ頭を突っ込んでいるが、だんだんと下から上へはいりこむと、しまいには全身をそのなかに入れることもできた。
 この耐圧空気室のなかには、いろいろな重要な器具や食糧や燃料などがそろっていた。まず発光装置があって、遠方からでもその位置がわかるように空間漂流器全体が照明されている。
 無電装置は送受両用のものがついているから、連絡にはことかかない。
 原子力発電機があって、ひつようにおうじてヘリコプター式のプロペラを廻して、上昇
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