隊長テッド博士以下の救援隊の首脳部の心の痛みは、災害をちょくせつに身にうけてその生命もいまや風前の灯火どうようの第六号艇の乗組員三十名よりも、ずっとふかく大きかった。
テッド博士たちとゲーナー少佐とは、あれから無線電話でたえずことばをかわしていたのだったが、テッド博士はついに第六号艇の火災と爆発とが、とても人力《じんりょく》によってふせぎ切れるものでないことを見てとると、艇員たち全部の退避をすすめた。
艇長ゲーナー少佐は、沈着な責任感の強い軍人だったので、隊長テッド博士のこのすすめには、すぐにはしたがわなかった。そしてなおも部下をはげまして消火作業をつづけさせたのであった。
だが、それから五分ののちに致命的《ちめいてき》な大爆発が起こり、そのために艇の後部はふきとばされてしまった。そのすごい光景は、司令艇の操縦室の映写幕にもはっきりとうつって、帆村も見た。見たは見たが、あまりに悲壮《ひそう》であってとうてい見つづけることはできなくて、おもわず両手で目をおおったほどだ。帆村だけでなく、他の人びとの多くも目をおおった。
隊長テッド博士だけは、またたきもせず、だいたんにこの地獄絵巻の
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